応用生物学系 井沢真吾 准教授らの研究グループは、組換えタンパク質生産を飛躍的に向上させる遺伝子を同定しました

 本学 応用生物学系 井沢真吾 准教授、山口大学 大学院医学系研究科 北川孝雄 助教、古谷-清木誠 教授、筑波大学 入江賢児 教授、株式会社豊田中央研究所 松山崇 主任研究員の研究グループは、組換えタンパク質生産を飛躍的に向上させる2つの遺伝子NAB6とPAP1を同定しました。
 本研究の知見は、超高額ながん抗体医薬の生産コストの大幅な低減に貢献すると期待されます。

 なお、この研究成果は、2016年11月15日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載されます。

【研究成果概要】

 がん治療に利用されるオプシーボやハーセプチンに代表される抗体医薬は、顕著な薬効を示す一方で非常に高価な薬のため、その生産をいかに効率的に行うかが今後薬価を下げる鍵となります。同研究グループは、抗体医薬を含む組換えタンパク質生産を飛躍的に向上させる汎用技術を確立するために、非翻訳領域のターミネーター領域に着目し、モデル生物の微生物である酵母において、組換えタンパク質生産を最も向上させるDIT1ターミネーターを同定してきましたが、DIT1ターミネーターがなぜ強力な組換えタンパク質の増産効果を持つのか不明でした。
 研究グループは、本研究において、酵母のゲノムライブラリーを用いることによりDIT1ターミネーターの増産効果に関わる遺伝子として2つの遺伝子、NAB6とPAP1を同定し、このNab6とPap1の作用によって、DIT1ターミネーター上流に配置した組換えタンパク質生産を2.5倍以上も向上させることに成功しました。
 DIT1ターミネーター、Nab6及びPap1を利用することによって、酵母のみならず、抗体医薬を生産する動物細胞においても同様に、組換えタンパク質生産量を飛躍的に増加させることができる可能性があると考えられるため、今後様々な産業への利用が期待されます。

なお、本研究は文部科学省?科学研究費補助金制度JP25660071、JP15K07378の助成を受けて行ったものです。

詳しくはこちらの資料をご覧ください(PDF)。

(参照図)

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Nab6-Pap1タンパク質複合体によるDIT1ターミネーター活性化機構のモデル図
Nab6がDIT13´-UTRのGUUCGと特異的に結合する。Nab6がPap1タンパク質をリクルートし、上流にコードされたターゲット遺伝子mRNAに作用した結果、ターゲットタンパク質の生産が促進される。